代表 おぎはら聡美が、日本歯科心理カウンセラー協会及び歯科心理カウンセラーについてインタビューを受けました。

「歯医者に来られない人を0にしたい」~歯科心理カウンセラーに込めた思いとは~

2023年9月1日、オダサガ歯科 健美サポートクリニックは、病院名を「歯医者が怖い方のためのさくら百華デンタルクリニック」へ変更いたしました。それに併せ、当院では新たに「歯科心理カウンセリング協会」を発足、2024年1月からは歯科心理カウンセラー資格取得養成セミナーをスタートします。

「歯は心」というおぎはら聡美(おぎはらさとみ)先生に、改めて歯科心理カウンセリングとは何か、またどうして歯科心理カウンセリングが大切なのか、インタビューいたしました。

「歯医者が苦手」は決して特別なことではなく、むしろ自然な感情


――おぎはら先生のご著書『「歯医者が怖いあなた」はまったく悪くない!』でも書かれていますが、日本にはおよそ8人に1人が歯科恐怖症のような症状を抱えているそうですね。

おぎはら:はい、そうなんです。おそらく「歯医者があまり好きではない」「そもそも歯医者にいいイメージを持っていない」という人も含めれば、その数はもっと増えると思います。それくらい、歯医者が苦手だ、という方は多いものなんです。当院に通ってきてくださる患者様の多くがこうした「歯科恐怖症」の症状を持っていらっしゃいます。症状の程度は大小あり、中には治療の椅子に座れない方、座るまでにものすごく時間を要する方もいらっしゃいます。

――そうなのですね……。歯科恐怖症に陥る方の特徴ってあったりするのでしょうか?

おぎはら:はい、歯科恐怖症を抱えていらっしゃる患者さまには3つの特徴があります。

まじめで、優しくて、自分を責めてしまう。たとえば、通っていた歯医者さんで大声で怒鳴られたり、「どうしてこんなになるまでこなかったんだ!」と言われたりしても、言い返すことができずに「きちんと治療を受けられない自分が悪いんだ」と思ってしまい、ますます歯科恐怖症を強めてしまうのです。

――だけど、歯に痛みや違和感があれば、治療せざるを得ません。患者様ご自身も葛藤がありますよね。

おぎはら:そうなんです。なので、歯科恐怖症の方のもうひとつの特徴として、「歯に関する知識が深く、ご自身できちんとケアをしている」ことが挙げられます。歯医者さんに行かなくて済むように、ご自身でブラッシングなどを本当に丁寧にされている方が多いんです。

ですが、むし歯や歯周病などはどうしてもご自身だけのケアだけでは完治させることはできません。そこで、当院ではこうした歯科恐怖症の方々が来やすくなるよう、「歯科心理カウンセラー」が在籍しているのです。

歯科心理カウンセラーは、患者様の「伴走者」として、心に寄り添うのが大きな役割


――歯科心理カウンセラーという言葉、初めて聞きました。どういったことをする方々なのですか?

おぎはら:歯科恐怖症患者専門のカウンセラーとして、歯科特有の心理(歯科心理)と接遇を学び、症状の根本治療に向かって患者様と伴走し続けるカウンセラーのことです。

主に担当するのは、初診時のカウンセリングや診療時の患者様とのコミュニケーションです。

とくに、歯科心理カウンセリングでは、初回~3回目までの対応がとても大切だととらえています。

「歯医者に来ることができた……」という安堵感や、「来ることはできたけど、やはり怖い」という恐怖感など、患者様にはさまざまな感情が入り乱れます。

そんな患者様に対して、私たちカウンセラーは勇気ある行動に敬意を持って接していきます。そして、患者様が抱く怖い、不快、不安といった感情をひとつひとつお聞きし、寄り添い、「歯科医院に来られなかったところから前進していますよ」という状態を患者様と共有します。寄り添い、ときに励ましていくことで、歯科治療ができる自分へと変わっていきます。いわばそのお手伝いをするのが歯科心理カウンセラーの役割です。

――たしかに一人ではなかなか克服できないことも、誰かと一緒なら頑張れたりしますよね。歯科心理カウンセラーさんがいるからこそ、治療にのぞめる方も多くいらっしゃるのですね。

おぎはら:何らかのトラウマで歯医者に行けなくなってしまった方でも、何とか歯医者に通いたいと思われている方のほうが実は大半です。なので患者様は「あともう一歩」の後押しを待っていらっしゃるんですよね。その患者様にとって必要なきっかけを与えていくことで、恐怖心はだんだんと減っていくのだと実感しています。ただ、その小さなきっかけが患者様ご本人にとってはものすごく大きな一歩であり、そこで味わう喜びや感動は計り知れないものがあります。

そういう意味で、その場に立ち会わせていただく歯科心理カウンセラーは、すごくやりがいのある仕事だと思っています。それと同時に歯科心理カウンセリングを学ぶことで、ご自身のウェルビーイング(Well-being)にもつなげてほしい、という思いもあるんです。

――と、いいますと?

おぎはら:一般的に医療従事者の方はいつも忙しく、業務に追われて余裕がない、という状況があると思います。他の職種と異なり、患者様の命、身体を扱いますから常に緊張していると思うんです。私自身ずっとそうでした。

それに加えて、歯科業界で言えば、院長先生が男性で、歯科衛生士さん、受付の方など、そのほとんどが女性です。女性は、ご結婚されていれば家事や育児、また介護など仕事以外のことにも神経を使う場面が多いですよね。だからいつもイライラしている、ストレスが溜まっていてモチベーションが上がらない……そういった方々にも、歯科心理カウンセリングを学ぶことによって「自分の体調や心の状態を整えることが、実はひいては患者様のため、家族のためになっていくもの」ということを実感していただきたいのです。

――たしかに、医療従事者の方は性質的に「自分よりも人様のこと」という傾向が強いように感じます。疲弊してしまうと、相手に優しくするなんてできないですよね。

おぎはら:無理です、無理です!やっぱり、自分が自分を認め、優しくしてあげて、自分の心に余裕がないと幸福感も得にくいですし、他人を幸せすることは難しいです。

「まず自分が幸せになりましょう!ということを医療従事者の方に伝えていきたい」というのが、歯科心理カウンセラー協会を作った一番の理由でもあります。歯科心理カウンセリングを通して、ご自身のメンタルもまた整えていただくことができたら、そこから患者様にも波及していくと思います。

歯科心理カウンセラー協会を発足。「カウンセリングの大切さ」をもっと多くの人に知ってほしい


――歯科心理カウンセラー協会のお話が出ましたが、この歯科心理カウンセリング、いよいよ協会として養成講座をスタートされると伺いました。

おぎはら:はい、歯科心理カウンセラー資格取得養成セミナーは、2024年1月28日からスタートし、全2回とテスト、その後のフォローアップ体制で、資格取得となります。

  • 心理とは?私たちの身の回りにある心理
  • 歯科特有の心理とは?歯科恐怖症患者様の心理
  • 人間の心理的欲求とは?
  • 自己受容感、自尊心、自己肯定感とは
  • 自分自身をマネジメントできるのは自分だけ ~感情のコントロール~

……などさまざまなことを学ぶのですが、いったんはカウンセリングへの共感性を高めるため、歯科医師や歯科衛生士さんなどの有資格者の方の受講を予定しています。

――多くの方がカウンセリングに触れる機会を持ち、患者様の心をケアすることでひいては歯科に通える人も増えていきそうですね。

おぎはら:はい。まだまだ多くの患者様にとってカウンセリングはなじみがないものだと思います。「特別な方が受けるものだ」「こんな小さな悩みでカウンセリングを受けるなんて……」まじめな方であればあるほど、そう感じてしまうかもしれません。

だけど、普段みなさんも友人や家族に自分の話を聞いてもらうと、心が晴れたり、気分が楽になったりしますよね。歯科心理カウンセリングもまたその延長線上だととらえていただき、構えずに気軽にカウンセリングを受けていただきたいと思っています。

歯科心理カウンセリングがもっと身近なものになり、カウンセリング文化が社会に根付いていくことは、私の理想でもあります。

そのためには歯科心理カウンセラーが活躍するような体制をもっとつくっていかなければならないと思っています。

――おぎはら先生、ありがとうございました!

歯科心理カウンセラーの広がりと共に、歯医者が気軽に通える場所になってほしい。おぎはら先生の歩みはこれからも続きます。

  • 歯医者が怖い方のためのさくら百華デンタルクリニックホームページ:http://odasaga-dental.com/
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    お問い合わせ|shika.counselor@gmail.com